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森みどりの府議会レポートNo.18

【1】子どもの安全対策

幼い子どもたちが犠牲になる事件が相次いでいます。池田市の付属池田小、寝屋川市の中央小と犯人が学校内に侵入してくるという事態にかなり大きな衝撃を受けましたが、この間立て続けに起こった広島県や栃木県の事件のように小学生が下校の途中に連れ去られ、殺害されるという痛ましい事件により、子どもをもつ親御さんたちは、子どもが家を出てから帰ってくるまで、不安で心の休まる間がないことだろうと思います。
そしてこのように大きく報道されている事件だけではなく、子どもたちが被害者になる事件が近年大変多いことに私は強い憤りを感じています。平成16年度の犯罪被害件数についてみますと、総被害件数213万7322件のうち0歳から20歳未満の少年の被害が35万6426件、率にしますと全体の16,7%ですが、成人と少年(20歳未満)との人口比にしてみますと、成人10万人当たり被害件数は約1726件、少年では1455件です。さらに被害内容をみますと、殺人、強盗、傷害、窃盗や詐欺などの被害は成人と少年の割合にあまり差はないか、少年の割合がやや少ないくらいですが、強姦は成人が10万人に1.15人の認知件数に対し少年の場合10万人に対し、4.03人の認知件数であり、実数で986件です。強制わいせつにいたっては総被害件数9184件のうち少年の被害が5505件、人口10万人当たりに直すと、成人が3.57人の認知件数に対し少年は実に6倍強の22.47人にも上っています。しかもこれは認知件数であって、被害として届け出られていないものも相当数に上るのではないかと想像できます。また、この間大きな事件ともなっています略取・誘拐をみますと、被害は少年のうちでも特に小学生がもっとも高い数値を表しているのです。
このような犯罪被害のデータから見ましても、子どもの安全を、あらゆる手立てを尽くして守る取り組みが必要です。
文科省が打ち出した緊急対策としての、通学路への防犯カメラ設置や通学路の安全点検ならびに安全マップ作り、大阪府としても知事が先日の会見で公表されたような携帯メールによる不審者情報の配信、校門監視員の配備、また地域の方々の協力による見回り強化、さらには来年2月から実験が開始されるICタグを使った「街角見回りシステム」など、最新の機器や地域の人の力を借りた取り組みなど、素早い対策が打ち出されています。
これらは確かに必要な取り組みですが、しかし100%これで安心というわけにはいきません。機械は故障することもあります。カメラが捕らえ切れない死角があります。見回りを強化しても24時間すべて大人がついて回るということは不可能です。
したがって、これらの取り組みと同時に、子どもたち自身が危険な状況を察知する力をつけることや、「自らの命を自ら守る」力をつけていくことも重要な課題であるといえます。それには具体的でわかりやすい方法で伝えていかねばなりません。「車に気をつけて」と言われても、横断歩道を渡るときと、歩道のない道路の脇を歩くときと気をつける方法が違うように、自分の命や尊厳を傷つける行為はどのようなものなのか、具体的な場面に即して教えると同時に、どうすれば被害を防ぐことができるのか、その対処法もできる限り身につけておくことが大事です。
その有効な手立てのひとつが、CAPのとりくみであると考えます。CAPとはChild Assault Preventionの頭文字をとったもので子どもへの暴力防止プログラムのことです。このプログラムは1978年にアメリカ・オハイオ州コロンバスのレイプ救援センターで開発・実施されたもので、日本には1985年に紹介され、現在まで全国各地の学校やPTAの講座などで実施され、その有用性は高く評価されているところです。暴力や性犯罪から身を守るためには、子ども自身がそれは不当なことだという認識を持つこと、つまりNOを言ってもいいのだということを学び、同時に危ういときにGO、逃げだしたらいいしその際に大声を出せる訓練など、その術も具体的に学びます。また万が一被害にあったとしても、自分が悪いのではないことをわかり、誰かに話していいのだということを学ぶことで、子ども自身がエンパワーメントするプログラムです。
以上述べましたように、子どもが被害者になる事件が頻発する中で、「子どもの命と尊厳」を何としても守るためには、ハード面の整備とともに、子ども自身の危機対処能力を高めるための取り組みも必要だと考えますが、知事のお考えをお聞かせください。

教育委員会では、弁護士などの支援を受けて、学校において子どもをセクハラなどの人権侵害から守り救済する「被害者救済システム」や女性や子どもの人権を守る活動をしているNPOによる「学校出前研修」を行う「学校における子どもへの人権侵害防止推進事業」が運用されているのを承知しています。これについてはわが党が強く要望してきたことでもあり、学校における子どもの人権を守る取り組みとして、高く評価しているところでもあります。 そこでこれら取り組みの実績ならびに、今後子ども自身が暴力やあらゆる人権侵害から身を守る力を育むとりくみについて、どのように推進していくのか教育長のご所見を伺います。

<知事答弁>

まず、「子どもの安全対策」についてお答えします。
先月末から10日ほどの間に、広島県と栃木県において、小学校1年生の女児が、下校途中に生命を奪われる事件が相次いで発生しました。亡くなられた児童に、心から哀悼の意を表するとともに、遺族の方々に心からおくやみを申し上げます。
一連の事件については、心の痛みと激しい憤りを覚え、「これ以上、子どもを犠牲にしてはならない。」との思いをさらに強くしております。
私はこれまで、府内の全小学校区に、「子どもの安全見まもり隊」を設置するとともに、不審者情報等をメールで携帯電話に配信する事業に補助を行うなど、子どもの安全対策の充実を図っております。
また、来年2月には、小学校の通学路で防犯カメラやセンサーを備えた自動販売機を活用した「街角見守りロボット」の実証実験を実施する予定です。
さらには、お示しのように、子どもたちがさまざまな危機事象に遭遇した際に、自分の身を守ることができるよう、自ら考え、行動する力を高めることが極めて重要であると考えており、子どもたち自身の危機対処能力を育成する有効な方策について、早急に検討してまいります。

<教育長答弁>

教育に関する2点のご質問にお答えします。
まず、子どもの安全対策についてですが、子どもが犯罪被害にあう悲しい事件が多発していることに、大変心を痛めております。
ご指摘のとおり、大人や地域が子どもをしっかりと見守るとともに、子ども自身が暴力などから身を守る力を育むことが重要であると考えております。
そのため、昨年度から「学校における子どもへの人権侵害防止推進事業」において、「学校出前研修」を、女性と子どもの人権擁護に関し活動するNPOに委託し、実施しております。
この研修は、子ども自身が暴力から身を守る力を育む指導方法等について、教員を対象に行うものであり、これまでに60校で実施したところ、教員の意識改革が進むなど、高い評価を得ております。
今後、この取組みのさらなる充実に向けた検討を行うなど、児童・生徒が自らを守る力を育成する取組みが広がるよう努めてまいります。

<《再質問》>

知事からは子どもがさまざまな危機事象に遭遇した際に、自ら考え、行動することにより、自分の身を守ることは極めて重要であり、有効な方策について早急に検討していくとの答弁をいただきました。
しかし教育長の答弁にありましたように、CAPなどを含め子どもの人権侵害を防止するなどの有用な取り組みも、昨年度と今年度合わせても60校での実施で終わっています。
さらに充実を検討し、この取り組みが広がるよう努めるといわれても、1年間で30校というこのスピードのままでは、府内全小学校727校にいきわたるだけでも24年もかかってしまいます。
今年の2月には、寝屋川市における教員殺傷事件が起こった際に、警備員等をすべての小学校に配置する事業が、約6億2千万円の予算で、急遽始まりました。不審者情報配信システム立ち上げには、年50万円を限度に市町村に補助をされることになっています。
ICタグを使った「街角見守りロボット」を普及させるならば億単位の予算が必要になってきます。
遠回りに見えるかもしれませんが、子ども自身がエンパワメントしていくとりくみは、被害者にならないためであると同時に、長い目で見れば非暴力のコミュニケーション力をつけていく、つまり加害者になることを防ぐ取り組みにもなりうると私は考えています。
そのような観点からも、幼稚園や保育所、小学校、中学校と年齢に応じて、継続して取り組んでいくことが必要ですし、それができる体制を作るために思い切った予算措置をして、強力に取り組んでいただきますよう、再度要望します。

【2】 特別支援教育の充実

次に特別支援教育について質問します。
近年、産業構造の変化や、高齢化や医療技術の進歩などにより、障害者を取り巻く社会の状況も変化してくる中で、障害のある者もない者も、社会の一員として社会活動に参加し、自立して生活することのできる社会をめざすというノーマライゼーションの理念をめざす取り組みも、教育、福祉、労働などの分野で進められできています。
さらに世界的には1994年6月にスペインのサラマンカにおいて開催された「特別なニーズ教育に関する世界会議」に92カ国、25の国際組織の代表が集まり、「サラマンカ宣言」が採択されました。そこでは障害の有無によらずすべての子どもを対象に、一人ひとりの教育的ニーズに応じて教育を行うべきであるというインクルージョンの考え方が示されました。
大阪においても大阪府学校審議会が、2005年8月12日付の答申「高等学校における知的障害のある生徒の受け入れ方策について」の冒頭で「障害のある子どもたちの教育については、近年の国際的な動向として、通常の教育の場で、一人ひとりの特別な教育的ニーズに応じて支援と指導を行うインクルージョンの方向に進展している」と記しています。
そのような状況の下、先日12月8日に、国の中央教育審議会から、文部科学大臣に対し、「特別支援教育を推進するための制度のあり方について」の最終答申が行われました。
この答申は、約2年間の論議を経てまとめられたもので、内容は障害のある幼児、児童、生徒の教育の基本的な考え方について「特別な場で教育を行う従来の『特殊教育』から、一人ひとりのニーズに応じた適切な指導および必要な支援を行う『特別支援教育』に転換」していくとされています。
これは、障害のある子どもたちに対する教育の理念と基本的な考え方を変更していこうとするもので、昭和22年(1947年)の学校教育法の制度施行や、また昭和54年(1978年)の養護学校義務制実施以来の大きな法制度改正を前提としたもので、障害児教育の考え方の根本的な改革といえます。
主な内容は、これまで盲学校、聾学校および養護学校と種別ごとに設置されていた盲・聾・養護学校制度を障害種別を超えた学校制度、「特別支援教育(仮称)」に転換し、その機能として、小・中学校で学ぶ障害のある子どもたちを支援する地域の特別支援センターとしての機能を位置づけること。そして小・中学校において、これまでの養護学級に在籍する障害のある児童・生徒に加え、LD(学習障害)ADHD(注意欠陥/多動性障害)、高機能自閉症等、学習や生活の面で特別な教育的支援を必要とする児童・生徒も特別支援教育の対象とし、それを支える仕組みとして、小・中学校における総合的な体制整備、養護学級の弾力的活用、通級による指導の見直し等、段階的に現行制度の見直しを行うこととなっています。
これらは理念的には評価できる点がいくつもあると思いますが、今後の法制度改正や要綱等で、国からどのような人的・物的両面の充実策が盛り込まれるかが大きな問題です。
大阪ではすでに「ともに学び、ともに育つ」教育の推進により、小・中学校における養護学級設置率は全国一の97%であり、在籍する児童・生徒数も来年度には1万人を超えます。ちなみに今年17年度は9809人です。
つまり大阪の小・中学校現場の教員は、全国に先駆け、障害のある子どもや親のニーズを受け止め、障害のある子もない子も、ともに机を並べて学習したり、一緒に遊んだりなど、自立と社会参加に向けた取り組みに日々努力を重ねてきた結果であるといえます。しかし努力といいましても、実は一口ではとても言い表すことができない、大変重い内容が含まれていることもこの際少し知っていただきたいと思います。私自身小学校で17年勤務してきましたが、その大半は、障害のある児童の原学級担任としてかかわってきました。重い自閉症でパニック状態になると自傷行為(自分で自分の頭を強く壁にぶつけるなどの行為を繰り返す)子どもや、多動で目を放すとすぐに視界から消えてしまう子どもなど、言葉でのコミュニケーションがほとんどとれない子どもたちでした。他の40人の子どもたちとともに、教室で学ぶわけですが、当然同じ教材では学習できません。養護学級担任と協力しながら、毎時間別教材を用意し、ときにクラス全体で一緒にできる内容を探します。休み時間にまわりの子どもたちとのかかわり方はどうか見守り、給食当番や掃除当番も皆と協力してできるように手助けをし、片時も目を離せない時期もありました。もちろん同じ学年の先生や管理職も含め、たくさんの協力があって毎日何とか乗り切っていたわけですが、幸い、毎日ともに過ごすことで周りの子どもたちが、その子どもの特性をだんだん理解してくれて、パニック症状を起こしそうなときは、事前に察知して心を落ち着かせるすべを見出してくれたり、姿が見えなくなると、行き場所の見当をつけて先回りしてつれてきてくれたりと、おおいに助けてもらいました。
最近、重度の障害をもつ子どもや重複した障害をもつ子どもたちが増えてきていますし、教育ニーズも多様化しています。一人ひとりのニーズに応じた適切な指導および必要な支援を行う「特別支援教育」の理念を達成するためには、小・中学校をさらにしっかりとサポートしていく必要があるのではないでしょうか。確かに、小・中学校は市町村設置ですが、障害教育の分野においては、盲・聾・養護学校の小・中学部と表裏一体の関係にあるわけですし、府としての支援が不可欠ではないかと考えます。
そこで、具体的提案をいくつかあげさせていただきます。

まず、子どもたちの障害が重度化、重複化してきている中で、たんの吸引や経管栄養など医療的ケアが必要な児童・生徒等が安心して小・中学校で安心して学べるために、たとえば看護士や理学療法士を配置するなどの条件整備が必要です。
また多様化したそれぞれの教育ニーズに対応できるよう、教職員の専門性向上や教職員同士または、医師等の専門家や専門機関との連携、教職員が担当する子どもたちのことを気兼ねなく相談できる相談機能の充実などの条件整備も必要です。
そして学校全体で取り組んでいく校内体制づくりがなんといっても大切です。それには特別支援教育コーディネーターの配置など、人的支援が不可欠です。
以上述べてきましたように、特別支援教育への転換をはじめとして、教育を取り巻く状況がめまぐるしく変化する中で、大阪がこれまで先進的に進めてきた「ともに学び、ともに育つ」教育を推進し、さらに発展させていくために、府としてどのような方向性を持って進めていこうとしているのでしょうか。とりわけ小・中学校が現状の取り組みを後退させることなく特別支援教育を推進していくため、どのように支援していこうとしているのでしょうか。
私は、先ほどの提案をさせていただきましたように、知恵を絞って大胆に進めるべきだと考えますが、教育長のご所見を伺います。

<知事答弁>

特別支援教育についてお答えします。
本府では、すべての幼児児童生徒が「共に学び、共に育つ」ことを基本として、一人ひとりの障害の状況に応じた教育を推進しております。
先般の中央教育審議会答申の基本的な考え方においては、これまで本府が実践してまいりました、障害のある幼児児童生徒を学校全体で受け入れ、各学校を地域の仲間とのつながりを大切にした「ともに学ぶ場」と位置づけるなどの取組みと同じ方向性が示されたものと認識しております。
お示しのように、近年、府内の小・中学校の養護学級の在籍者数は増加傾向にあり、障害の状況についても、重度化、多様化の傾向にあります。
このような中、医療的ケアの必要な児童生徒やLD、ADHD等の軽度発達障害のある児童生徒への対応が大きな課題となっていることから、学級担任だけではなく、学校全体で受け止めるための校内体制づくりや個別の指導計画作成、指導方法等の工夫改善、さらには学校外からの支援の在り方など教育条件の整備を進めていく必要があります。
各市町村においては、その中心的な担い手となる特別支援教育コーディネーターの養成に取り組むとともに、教員の専門性の向上や校内体制整備を図っております。
今後とも、教育を支えるのは人であるとの考え方のもと、これまで培い推進してきた「共に学び、共に育つ」教育のより一層の推進に向け、市町村教育委員会と連携しながら、人材育成や養護学級の増設置などを含めて、障害のある幼児児童生徒の教育条件の整備について有効な方策の実現に最大限努力してまいります。

<《再質問》>

特別支援教育への、人的・物的支援について、教育長から最大限努力するとの力強い答弁がありました。
最前線の教職員は日々、悪戦苦闘し、がんばっているところであり、さらにこれからの新たな課題にも対応していかなければならない状況にあります。
こうした中、先般、これまで盲・聾・養護学校及び小・中学校養護学級に勤務する教員等に、その特殊性に基づき、支給されてきた給料の調整額を府は全国で初めて廃止すると打ち出しました。総額43億円にものぼります。
調整額廃止については、さまざまな考え方があると思いますが、大阪府が廃止の理由として「養護学級に在籍する児童・生徒に対する教育は『ともに学びともに育つ』という教育理念の下で、学校全体、教職員全体で取り組まれており、養護学級担当教員の勤務条件のみが著しく特殊であるとはいいがたく、これに対して給料の調整額を支給することは、他の教員との均衡を欠くものである。」とあげている以上、少なくとも学校全体でとりくむ障害のある子どもたちの教育の充実のために支援していくことが必要ではないでしょうか。
重ねて強く要望して、質問を終わります。